2013年5月20日
「三人で生きてきた姉妹のまなざし」(映画『三姉妹~雲南の子』レビュー)
昨年のヴェネチア映画祭のオリゾンティ部門最優秀賞を始め、「ナント三大陸映画祭」でのグランプリと観客賞、「ドバイ国際映画祭」の最優秀監督賞、「フリブール国際映画祭」のグランプリ「リスボン国際ドキュメンタリー映画祭」グランプリなど既に数多くの著名な映画祭で受賞済みのワン・ビン監督の『三姉妹~雲南の子』が、いよいよ今月25日からシアター・イメージフォーラムで公開される。

私が鑑賞した昨秋の「第13回東京フィルメックス」では、特別招待作品として上映されたが、上映開始早々に震度4の地震が起きたにも関わらず、観客の皆さんがさほど動じることもなくスクリーンから視線を外さずに見続けたのは、ドキュメンタリーの持つ魅力、また引き込まれる程に過酷な現実の厳しさに圧倒され凝視していたからだろうか。雲南省の海抜3200mにある中国で最も貧しいとも言われる80戸程の集落に住む三姉妹(10歳、6歳、4歳)の子どもたちを軸とした2時間半に及ぶドキュメンタリー映画。母は子どもたちを捨て家を出、父は出稼ぎで街に暮らしているため、三人だけで粗末な家に暮らし、実年齢より幼く見えてしまう僅か10歳の長女が親代わりとなって妹たちの世話を焼いている。

監督は記者会見で、そんな三姉妹と山岳地帯の村で出会ったのは偶然であったとしているが、やがて消え行く村と地域によって事情は異なるものの政府の「ひとりっこ政策」に逆行するような三姉妹。その日常の姿を記録として淡々と映像に残し、世界にメッセージを届けることになったのは、必然でもあり、使命でもあったように思える。目端が利いてやんちゃで姉に反目しがちな次女、まだあどけなさが残り姉たちの後を追う三女、幼い妹たちの面倒を見ながら飼っている豚や羊の世話に畑仕事をこなし、寡黙で笑顔を見せることも滅多にない長女。次女と三女には「共存」、三女と長女には「信頼」、そして次女と長女には「競争」という象徴的な三姉妹の関係性には、出生順位が色濃く反映されている。

私たちには想像ができないような環境下にあっても三姉妹たちは、幼いながらに貧しさに負けない程の生命力と生き抜いていく逞しさを備えている。その源は、監督が言うように「三人が寄り添って生きている」ことであり、それは血のつながりだけではなく、小さい時から一緒に育ってきた歴史の重み、共通体験なども侮れないものとしてある。とかく三姉妹と言えば「姦しさ」や「華やかさ」がキャッチであり、魅力でもあるが、その対極に位置するような本映画の三姉妹には、両親と離れ貧しい村で三人だけで生きてきたという事実がある。たとえ強い風に吹かれようとも、一見それぞれが違う方向を見ているようでも決して揺るぐことのない、三姉妹の一緒に生きてきたまなざしからは目が離せない。

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