2017年2月1日
八人の人気実力女性作家による三姉妹を描いた小説相次ぎ発刊
一昨年の秋から女性作家による三姉妹を主人公にしたり、登場させる小説が相次いで出版されています。商店街を舞台にした『三人屋』(原田ひ香)、認知症の父と家族の温かく切ない十年を描いた『長いお別れ』(中島京子)、昭和30年代の釧路を描いた『霧(ウラル)』(桜木紫乃)、アラサー女子たちの葛藤と成長が書かれた『あのこは貴族』(山内マリコ)、京都の春夏秋冬が息づく綿矢版『細雪』の『手のひらの京(みやこ)』(綿矢りさ)、実在の三姉妹と三兄弟が結婚する『大沼ワルツ』(谷村志穂)、三姉妹と母の絆を巡る切なくも温かいミステリー『木もれ日を縫う』(谷瑞恵)、「本屋大賞」にもノミネートされた渾身の大長編『みかずき』(森絵都)。いずれも人気も実力もある女性作家で、実に八作品にものぼり、空前絶後の“三姉妹小説”ラッシュとなっています。舞台や時代設定、三姉妹の描き方などは当然異なりますが、女性作家それぞれの個性が随所に表れており、八通りの三姉妹像を楽しむことができます。

朝は三女・朝日の喫茶店、昼は次女・まひるの讃岐うどん屋、夜は長女・夜月のスナック。お年寄りの多いラプンツェル商店街で、街の人には「三人屋」と呼ばれる「ル・ジュール」が再開店。原田ひ香さんの『三人屋』(実業之日本社)は、可笑しくてホロリとする商店街の人情ドラマ。中島京子さんの『長いお別れ』(文藝春秋)は、10年ほど前から認知症を患っている中学校長や図書館長を務めた父親は、長年連れ添った妻とふたり暮らしですが、サンフランシスコ在住の長女・茉莉、子育て中の次女・菜奈、フードコーディネーターの三女・芙美の三姉妹と孫もいます。両親と三姉妹の穏やかながらもしみじみとした愛と奮闘の物語。山内マリコさんの『あのこは貴族』(集英社)は、三姉妹・三女の華子は、商社マンに嫁いだ長女・香津子や皮膚科医の次女・麻友子とは年の離れた末っ子で、顔だちも愛くるしく素直な性分。上流階級を舞台に東京生まれの箱入り娘と地方生まれの雑草系女子の葛藤と成長を描いた物語。

また、桜木紫乃さんの『霧(ウラル)』(小学館)は、北方領土を奪われた昭和30年代の根室を舞台に老舗水産会社に生まれた三姉妹の愛憎を軸に描かれています。ヤクザの組長と恋に落ちた次女・珠生、政界入りを目指す運輸会社の御曹司に嫁いだ長女・智鶴、金貸しを養子に迎えて実家を継ぐ三女・早苗の物語。取材で桜木さんは「書いていて不思議だなと思ったのは、持って生まれた気質と生まれ順はリンクしていて、人は与えられたポジションに忠実に生きていくものだな」と答えています。基本的性格は幼少期の体験によってほぼ決定されると言われますが、中でも最も影響を及ぼすのが兄弟姉妹の位置関係であるという学説もあるだけに興味深い発言です。綿矢りささんの『手のひらの京(みやこ』(新潮社)は、京都を舞台にした三姉妹が主人公の作品。おっとりした長女綾香、美人で華やかな次女・羽依、子どもの頃からお姉ちゃんたちより敏感なところがある三女・凛。三姉妹を軸に人生の息吹を描いた長編。

谷村志穂さんの『大沼ワルツ』(小学館)は、戦後間もなく北海道・七飯町に移り住んだ山梨出身の長女が開拓者の子孫で三兄弟の長男と所帯を持ち、次いで次女が次男と、三女が三男と結婚していく実在の三姉妹をモデルにした小説。家族の強い絆と大沼の雄大な自然が描かれています。谷瑞恵さんの『木もれ日を縫う』(集英社)は、行方不明だった母が戻ってきたものの面影にどこか違和感が。困惑する三女・紬は、フォークリフトも乗りこなす次女・麻弥と専業主婦の長女・絹代に相談します。仕事や恋、家族について、それぞれに悩みをいだく三姉妹は、母との再会で変化が起きていきます。昭和のベビーブームや経済成長を背景に平成までの塾業界を舞台に三世代にわたって繰り広げられる5年ぶりの森絵都さんの『みかづき』(集英社)では、創業者の両親には常に周囲をきづかう長女・蕗子、成績優秀で我が強い次女・蘭、人懐っこく活発な三女・菜々美という三姉妹がいますが、塾や両親の不和に翻弄されます。
Copyrights (C) 2011  SANSHIMAI Institute of Research, Inc.All Rights Received.